昔、思わせぶりな言葉に絆されて、のぼせ上がった人がいる。
最初から気持ちの温度差は歴然としていたし、甘い言葉は私一人に言っているわけではなかった。またそれを隠す人でもなかった。
いつも心の隔たりを感じていた。
つきあっているわけでもなかったから、私は自分の心を封印した。
恋というフィルターを取っ払うと、言いたいことが言えるようになったし、いろんな側面も見えてくるようになった。
優しくて人当たりも良いが、精神的にドSである。
自分が傷つくのを極度に嫌い、そうされそうになると、微笑みながらさりげないふりして先制攻撃をしかけ、見えない壁を作る。
近くなった、と思うと、すぐ遠くに離れる。結局友達にもなれなかったのだろうか。
ふとそんなことを思い出した、バレンタイン・デー前夜一人きりのハーバーであった。